

「見えなかった経費」を可視化し、業務効率とガバナンスを両立。ベイカレントが実現したAI活用の第一歩
日本のDXを牽引する総合コンサルティングファーム、株式会社ベイカレント。数千名にのぼるコンサルタントは顧客のニーズに応えるため、毎日めまぐるしく活動しています。その移動手段としてタクシーを使うことも多く、経費精算には多くの負担と手間が生じていました。
その課題解決のため、同社は『GO BUSINESS』を導入。タクシー利用時に発生していたいくつもの業務が大きく効率化されたことに加え、ガバナンス強化やAI活用といった副次的な成果にもつながっているといいます。
そんなベイカレントの取り組みについて、コーポレート部の松本和也さま(写真左)と石橋真さま(写真右)に話を伺いました。
目次 [隠す]
課題
- タクシー利用者は領収書の撮影・経路入力が必要で、利用頻度の高い人は領収書処理に個別の事務担当者を要するほど負担が大きかった
- 管理者は不備確認や差し戻しに追われ、月間50時間もの工数が発生していた
- 不備をめぐる確認・修正依頼が頻発し、利用者と管理者、あるいは事務担当者との間で、非効率なやり取りが続いていた
実施策
- 経営層・幹部層の会議体で導入方針を迅速に決定した
- 一部チームでトライアルを行い、運用の安定性を確認してから全社展開を行った
- 社用スマートフォンを活用し、全社員が負担なく利用できる環境を整備した
効果
- 利用者側の申請業務や立て替え負担がゼロになり、現場でのタクシー利用の利便性が大きく向上した
- 正確な乗降データにより利用実態が可視化され、社内ガイドラインに沿わない利用の確認が容易になった
- 業務効率化によって生まれた時間を、AI活用検討などの高付加価値業務に充てられるようになった
経費精算に生じていた利用者側とコーポレート側の負担
お二人の業務内容について教えてください。
松本さま 私は2015年に新卒で入社して以来、約10年間コーポレート部に所属しています。内部監査室の立ち上げや経費精算・勤怠管理サービスの導入等を経て、現在は給与、経費、税務など、バックオフィス全般の業務に幅広く携わっています。
石橋さま 私は2023年にコンサルタントとして中途入社し、その後コーポレート部の経理Gr.に異動しました。現在は松本とともに、経費精算やコーポレート部の業務改善に携わっています。
ベイカレントさまは普段、どのようなケースでタクシーを利用しているのですか?
松本さま 当社のコンサルタントは、主に電車やバスでは移動が難しい場合にタクシーを利用しています。例えば、最寄り駅から離れたクライアントの工場等への移動や、プロジェクトが佳境を迎えている際の終電後の帰宅、または始発前の早朝出勤の際に利用しています。
またその他のケースとして、お客様と同乗して移動する場面や、会食後にお客様をお送りする場面などにおいてもタクシーを利用しています。
こうしたタクシー利用において、どのような課題がありましたか?
松本さま 私たちから見て、「見えない課題」と「見える課題」の二つがありました。
「見えない課題」とは、主にタクシー利用者が抱えていた課題を指します。
『GO BUSINESS』導入以前、当社ではタクシーの経費は経費精算アプリに入力していました。具体的には、タクシー利用後に領収書を撮影し、利用目的や経路、承認者を入力して申請するという手順を取っていたのです。この作業には、多くの負担があったと思います。
石橋さま 特に利用頻度の高い方になると領収書の枚数も多くなり、一人で処理するのは困難で個別に事務担当者が必要なほどでした。
とはいえ、事務担当者も領収書を渡されただけでは「どこからどこまで、何の目的で使ったのか」が分かりません。結局、利用者本人に確認したり、利用者が手書きで領収書にメモを追記したりと、双方にコミュニケーションコストが発生していました。
これらは各地で起きていたため、正直どれほど工数がかかっていたか私たちからは見えていませんでした。ただ、全社で考えると相当な時間がかかっていたのは事実だと思います。
松本さま 一方で、「見える課題」というのは私たちコーポレート部が抱えていた課題を指します。
タクシーの経費精算時の入力項目は、選択式ではなくフリー入力だったため、社員によって入力内容がバラバラだったり、申請内容に不備があったりしました。利用目的や経路が書かれていないケースも多く、不備を発見したらその都度、申請者に差し戻して修正を依頼する作業に追われていたんです。
石橋さま この差し戻しや内容の確認、そして各プロジェクトの利用額集計といった一連のタクシー経費関連業務にかかる時間は、部署全体で月に50時間ほどに達していました。
こうしたタクシー利用にまつわる課題を解消するため、『GO BUSINESS』を導入することにしたんです。
現場サイドと管理サイドの負担軽減に大きく貢献
『GO BUSINESS』導入にあたり、社内ではどのようなやり取りがありましたか?
松本さま タクシー利用における現場の負担軽減について、経営層による会議がありました。その時、導入システムの候補としてすぐに『GO BUSINESS』が挙がりました。
経営層は時間効率の都合上、タクシーを利用する機会も多いため、『GO』アプリのことも認識していました。こうした背景もあり、ごく自然な流れで、法人向けサービスである『GO BUSINESS』の採用へと至りました。
非常にスムーズな流れで『GO BUSINESS』導入へと至ったのですね。全社的な利用はどのように進めていったのですか?その際、社内からの反発などはありましたか?
石橋さま まずは一部のチームで約2ヶ月間トライアルを実施し、利用者・管理者双方の運用面で大きな問題がないことを確認しました。その後、全社へと展開しましたが、社内からの反発はありませんでした。むしろ、従来の経費精算業務に負担を感じていた現場の社員からは、「導入してくれてよかった」というポジティブな声が多く上がりました。
松本さま 全社展開にあたっては、まず経営幹部やマネジメント層の会議で方針を伝え、そのうえで各部署・全社へと順次広げていきました。段階的にコミュニケーションを取ったことも、社内で混乱や反発が起きなかった理由のひとつだと思います。
また、当社では全社員に社用スマートフォンを貸与しており、アプリはその社用端末に入れる運用としました。個人のスマートフォンを使う必要がなかったことも、スムーズな導入につながったと感じています。
導入によってどのような効果がありましたか?
石橋さま タクシーの利用者である現場の社員からは、「領収書の管理が不要になり、精算作業が非常に楽になった」という声が最も多く寄せられています。領収書を一枚ずつ撮影し、必要事項を入力する手間が完全になくなったインパクトは、非常に大きかったようです。
松本さま 立て替え払いが不要になったことも大きな変化です。その金銭的・心理的な負担から解放されたことを喜ぶ声も聞かれます。
管理者側であるコーポレート部の方々の業務には、どのような変化がありましたか?
松本さま 『GO BUSINESS』では、乗車日や経路、金額といった情報が自動でデータ連携されます。そのため、これまで多発していた「経路の記載漏れ」といった申請不備が起こらなくなりました。
以前は、経費精算アプリに入力されたデータにばらつきがあり、正確な分析を行うには手作業で表記を統一する必要がありました。『GO BUSINESS』導入後は、乗降場所が地図情報と紐づき、整ったデータとして記録されるようになり、こうした整形作業も不要になりました。
さらに、領収書を整理していた事務担当者の負担も軽減され、他の関連業務に費やす時間を確保しやすくなりました。
データの可視化によって進むガバナンス強化とAI活用
業務負担の大きな軽減につながっているのですね。
石橋さま 『GO BUSINESS』で正確な情報を得られるようになったことで、ガバナンスの強化も進められています。
私たちは月次で社員ごと・プロジェクトごとのタクシー利用状況を集計し、タクシー利用額に急激な増加がないか等のチェックもしています。これまでは申請内容だけでは判断材料が限られていましたが、現在は『GO BUSINESS』の利用履歴を通じて、より詳細な実態を調べられるようになりました。
その結果、社内ガイドラインで定められた利用以外のケースについても、内容も把握しやすくなったんです。
どういうことでしょうか?
石橋さま ガイドラインで定められていない用途のタクシー利用があった場合、これまではそれが「上司の指示による業務上必要な利用」だったのか、「業務上の必要性も含めて個人の判断による利用」だったのかを見極める手がかりを得ることに苦労していました。しかし今では、データという客観的な事実に基づいて議論できるようになりました。
例えば、『GO BUSINESS』の利用履歴から、特定のプロジェクトにおいてガイドラインで定められていない用途とおぼしきタクシー利用が多く発生していたとします。詳細を確認した結果、それが会社の意図に沿わない利用だと判断できる場合は、社員への注意喚起が必要になります。一方で、「ガイドラインには適合していないが、現場の実態にガイドラインが合っていない」というケースもあります。その場合は、ガイドライン自体の見直しが必要です。
データによってタクシーの利用内容が可視化されたことで、ガイドラインの妥当性を検証し、必要に応じて改定できるようになりました。
『GO BUSINESS』でAIによる自動化をさらに促進
今後の展望についてお聞かせください。
松本さま 私たちの最終的なゴールは、タクシーに限らず、すべての経費チェックをAIで自動化することです。この目標の達成にとって、『GO BUSINESS』は重要な存在だと考えています。
AIが正確な判断をするためには、インプットとなる学習データの質と量が何よりも重要です。『GO BUSINESS』によって得られる、正確で歪みのない乗降データは、まさにAIを賢くするための最高のデータといえるでしょう。
その第一歩として、現在は『GO BUSINESS』のデータをもとに、ガイドラインに沿わない利用を検知するためのAIプロンプトの構築などを行っています。例えば、『GO BUSINESS』の乗降データと社員の勤怠データを突合させて、終電がある時間における帰宅目的のタクシー利用が無いか検出するというシステムを作りました。
同様に、電車などタクシー以外の移動手段についても、正確なデータの蓄積を行えるようにしていきたいなと。AIをフル活用して、いずれは経費精算のチェック業務そのものをなくしたいです。
『GO BUSINESS』をAI活用推進の促進剤として活用いただいているのですね。
松本さま さらにAI活用を進める上で、事前に用意したプロンプトをもとに、『GO BUSINESS』が利用者に案内を出してくれるようになると嬉しいなと考えています。例えば、タクシー手配時に「この利用はガイドラインに沿わない可能性があります」といったアラートを出してくれるとか。
こうしたサポート機能が搭載されれば、タクシーの利用者の迷いや管理者の確認コストを、さらに削減できるはず。そんな進化を期待しています。
ご期待に添えるように頑張ります!最後に、『GO BUSINESS』の導入を検討している企業へ向けて、メッセージをお願いします。
松本さま 利用者側の工数削減とガバナンス強化。この二つを両立させたいと考えているのであれば、『GO BUSINESS』の導入を強くお勧めします。
- 掲載内容は取材当時の情報です。

株式会社ベイカレントは、日本最大級の総合コンサルティングファームとして、戦略策定から業務改革、デジタル活用支援まで一気通貫で企業の変革を支援しています。幅広い業界・領域に知見を持つコンサルタントが、クライアント企業の課題に寄り添いながら、継続的な成長と競争力強化を実現するためのソリューションを提供しています。
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